クラスター対策に至る初期論説 Kyra Grantz "Dispersion vs. Control"を読む
どうもこの論文がクラスター対策の論拠の一つのようだ
なぜクラスターへの重点対策が有効と考えられるのか。これは,暫く前に西浦さん(引用者補足:おそらく西浦博さん)が注目していたGrantz K, Metcalf CJE, Lessler J (15th Feb 2020) Dispersion vs. Control.が鍵で,R0の分散が非常に大きいことから,おそらくこのウイルスは集団内を均質に広がるのではなく,クラスターを作りながら広がり,クラスター内にはR0が非常に高い状況が生まれるが,それ以外では1未満である可能性がある。そこで地域クラスターを検知して集中的に対策することで,Rtを1未満にできれば,全体としてのアウトブレイクは終息に向かうはずだということだ。数理モデルでは可能性が示されている。あとはそれが実行可能かどうかだ。 武漢(Wohan)での$ R_0が2-3だったのにそれ以外だともっと低いという観測事実がある これらを成立させる仮説
A. 隔離と検疫で中国国外に伝播していない(Rが減っている)
B. 大多数の感染が少数のイベントによって起きていて、大部分のイベントでは感染していない
実際にはこれらの組み合わせなのではないか?これを推定したい
仮定:感染者と接触した二次感染者は感染者は以下のparameterの負の二項分布で表現できる(LIoyd-Smith et al., 2005)
分散パラメータ$ \theta(接触や環境などの個人の性質をエンコードしたものとみなせる)
中国国外で観測した二次感染イベントの数と一貫した$ R_eとθを推定する
WHOの公開観測データからサンプルのデータセットを生成して、サンプルデータがランダムなRe(0.1-3が適当な探索範囲らしい)と一貫性が取れるようにθを推定する
onward transmissionの80%をする個人の割合によってθを区分するとθを理解しやすくなる
20/80 ruleのアナロジー
From an analysis of the distributions of measures of transmission rates among hosts, we identify an empirical relationship suggesting that, typically, 20% of the host population contributes at least 80% of the net transmission potential, as measured by the basic reproduction number, R0. This is an example of a statistical pattern known as the 20/80 rule.
わかったこと(リンク先の図を見ながら)
過分散のとりうる値の範囲が観測データ(グレーの領域)と一貫性があり、$ R_eの平均が減少に転じるのは$ R_e = 2の時。
減少に転じるとは?基素.icon
Wohanと同じように$ R_eが2-3あるとすると、80%の感染を生んでいる人たちは9.9%
R0の分散がでかいと上で言っているのはこれを指している?基素.icon
ごく少数が多数に感染させているということ
この範囲のθの平均は2003年のSARSの時より低いので、個別の$ R_eの分散(distribution of indivisual $ R_e)はSARSの時より歪んでいるかも
ここ理解できてない基素.icon
$ R_eが0.5-1で10%
θが大きい(過分散が少ない)ほどコントロールが難しいらしい θが大きいと過分散が少なくなるのはなぜ?基素.icon
θが高いほど青色のplotが大きくなっているのと関係する?
Wohan以外で広まっていないのは、よく制御できているとか根本的な性質が異なと考えることは危険であることを示している
推定
専門家の間でも色んな意見があるようだ
大体はCFR 1-2%と見積もっているようである(2020年3月)